北見公演実行委員会よりご挨拶 |
この事業は、ロシアの軍事侵攻が続くウクライナにあって、劇場運営や演奏活動が極端に制限されている「ウクライナ国立オデーサ歌劇場」の窮状を救うことを目的に行われる来日コンサートの、北見市における公演を実現させるものです。来日コンサートは、この歌劇場の首席客演指揮者である吉田裕史氏によって企画され、横浜、神戸など本州の大都市圏以外では北見のみでの開催となります。
吉田氏は北見市常呂町の生まれであり、幼少期の夏冬を過ごした出生地への深い思いや祖父母への感謝の思いから北海道での唯一の公演地として、北見公演を決定したものです。
この公演は、窮状に晒されるウクライナの演奏家への支援を一義的目的としますが、ウクライナで最も古い歌劇場オーケストラの精髄に触れ、戦禍の下にあって尚、音楽を奏で続ける演奏家の魂と平和希求の叫びを届けたいと思っております。そして、ウクライナはじめスラブ諸国・民族の歴史と文化、そして現状に眼を向けていただくとともに、平和希求の声が広く高まり響くことを期待しています。
しかしながら、フルオーケストラでの公演には多額の資金が必要であり、北見の小規模なホールではチケットの販売額と補助金では総予算を賄えない状況にあります。つきましては皆様の特段のご理解とご支援のもと、チケット購入と合わせて、個人寄付やご協賛金を賜れますよう心よりお願いを申し上げます。
2025年1月
ウクライナ国立オデーサ歌劇場オーケストラ北見公演実行委員会
実行委員長 長南 進一
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吉田裕史からメッセージと写真が届きました |
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リハーサルの途中、警報を受けてシェルターへ 戦地へ向かう兵士たちと共に |
※北見実行委員会では、「コンサートの中で映画「ひまわり」のテーマを演奏できないか」と吉田氏を通じオーケストラにリクエストをしましたが、オーケストラ側から返事が参りました。オデーサの緊張した状況が伝わってくる内容ですので、そのまま掲載いたします。(北見実行委員会)
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Hiroへ Igor、そしてオーケストラは現状、非常に混乱しています。
新しい楽曲をたくさん譜読みしなければならず、追加のリハーサル時間を確保する余裕はありません。毎日3〜4回の空襲警報があり、多くのリハーサルが中止になっています。3つの異なるコンサートを準備するのは非常に難しい状況です(3つの異なるプログラムがあります)。12月の「修道女アンジェリカ」と「ジャンニ・スキッキ」のリハーサルでも大きな困難がありました。
ウクライナの劇場内で演奏する分にはまだ問題ありませんが、日本に準備不足のまま行くのは非常にリスクが高いです。
これ以上変更を加えると、リハーサル時間が短くなってしまいます。彼らは「はい」と答えるかもしれませんが、その結果は良いものにはならないでしょう。リハーサル時間は非常に限られており、警報が減るかどうかも分かりません。
北見側にオデッサでのリハーサルがどれほど困難か、正直に伝えるほうが良いでしょう。今の劇場は通常の状態ではなく、戦争の影響下にあります。リハーサルが中断されることが頻繁にあります。新しい演目は特にリハーサルを必要とするため、質を確保するのが難しい状況です。 |
吉田裕史ー生まれ故郷への想いと音楽の架け橋ー |
このたび、ウクライナ国立オデーサ歌劇場オーケストラとの共演で、生まれ故郷である北海道北見市にてコンサートを開催できることは、私にとって本当に大きな喜びです。指揮者としての私の歩みを振り返るとき、常呂(現北見市常呂町)での幼少期の記憶が心の中に鮮やかに残っています。その原体験は、音楽を創る上で今も私を支える大切な存在です。
私は1968年、常呂にあった「常呂国保病院」で生まれました。いわゆる里帰り出産という形で母の実家に生を受け、その後は千葉県船橋市で育ちました。ただ、毎年夏休みや冬休みには、弟2人と一緒に3人で母の故郷である常呂を訪れ、豊かな自然の中でたっぷり時間を過ごしました。夏休みは内地の小学校の休暇に合わせて約40日間、冬休みも半月近く常呂で過ごすのが恒例でした。ホタテや北海縞エビ、毛蟹、ホッケといった北の幸に加え、北見ならではの美味しい芋やとうきびを味わった思い出は今も鮮明です。夏には常呂前浜で遊び、冬には常呂中学校近くの丘でスキーを楽しむ―その日々は、北海道の自然と人々の逞しさに触れる貴重な時間でした。
これまで私は、イタリア・ボローニャ歌劇場フィルハーモニーの芸術監督や首席客演指揮者を歴任し、現在はモデナ・パヴァロッティ歌劇場フィルハーモニーの音楽監督、そして2021年より縁あってウクライナのオデーサ歌劇場の首席客演指揮者を務めています。イタリアはオペラの本場であり、ウクライナはバレエやスラブ系音楽の伝統が豊かな国です。これらの国で多くの舞台を通じて、音楽が文化や人々を結びつける力を強く感じてきました。このコンサートを通じて、文化や音楽の魅力にも少しでも触れていただければと願っています。
それでは、「北見芸術文化ホール」で皆様とお会いできることを心から楽しみにしています。この特別なひとときを一緒に共有し、音楽を通じてつながれることを心より楽しみにしております。会場で皆様とお会いできるのを、心待ちにしています。どうぞお気軽に足をお運びください。
吉田 裕史
ウクライナ国立オデーサ歌劇場 首席客演指揮者
イタリア・モデナ パヴァロッティ歌劇場フィルハーモニー 音楽監督
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